東工大生向け素数大富豪のすすめ7*17^2
(筆者: カステラ(twitter: @graws188390))
この春より東工大生になられる皆さん、ご入学おめでとうございます。 私たちは東工大素数大富豪同好会です。
皆さんは「素数大富豪」というゲームをご存じでしょうか。 東工大に入学する皆さんのことですから「素数」はほぼ間違いなく知っているでしょう。 「大富豪(大貧民)」というトランプゲームも細かいルールの差異はあれど知っている人が多いことでしょう。 しかし、「素数大富豪」となると残念ながら東工大生の中でも知名度はあまり高くありません。 素数大富豪やってますと言うと「東工大生らしいね」という声はちらほら耳にするのですが、実際に素数大富豪をする東工大生はなかなか見つからないのが現状です。 そこで、本稿では「素数大富豪」というゲームを紹介します。 素数大富豪そして東工大素数大富豪同好会に興味をもっていただいたら幸いです。
素数大富豪のルール
一言でいうと「大富豪のルールで素数を出して手札を早くなくした人の勝ち」です。 正確なルールは当同好会作成のtwitterのツリーやWikipediaなどからご覧いただけますが、上の一文がわかれば素数大富豪のルールを1/3は理解したといえます。なお強弱は素数の大小で決まります。 さらに「素数はカードの数字を連結させて作る」*1「素数と確証がない数も出してよい。出された数は都度判定し、素数でなければ山札からカードを引く」「57を出すと場が流せる(グロタンカット)」「1729を出すと場の強弱が逆転する(ラマヌジャン革命)」「ジョーカーは単独で出すと1枚出し最強、他のカードと出すときは0~13のいずれかの整数の代わりとなる」「自分の手番のたびに1枚山札からカードを引く権利がある」「素因数も同時に出せば合成数も出せる」まで理解できればルールをほとんど把握したといってよいと思います。
ルールがわかったらcpu対戦をしてみましょう。こちらから対戦ができます*2。 素数大富豪
素数大富豪でもっと勝ちたいと思ったら、コツなどをまとめた記事を書きましたのでご覧ください。 qk-titech.hatenablog.com qk-titech.hatenablog.com
素数大富豪大会
素数大富豪はまだマイナーなゲームですが、いろいろな大会が開催されています。 その中でも最も大きいものが「マスプライム杯」です。 年1回のトーナメント形式で、毎年ハイレベルな試合が繰り広げられます。 この春から素数大富豪を始めれば今年のマスプライム杯にも余裕で間に合います! 詳細は5月頃に発表されるので、注目しましょう。 mathp-cup.localinfo.jp
同好会に入るには?
twitter(@qk_titech)のDMにてご連絡ください。
3月29日(水)~31日(金)の新入生健康診断でビラ配りをしていますのでぜひお声がけください。
4月に新歓のイベントを予定しております。 オンライン(素数大富豪オンラインとZoom)とオフライン(Taki Plaza)で各2回開催予定です。 申し込みはこちらからどうぞ! docs.google.com
一番揃いやすいoverKJQJって何?
(筆者:かいたい @kAItAI_wInd_Is)
本記事では以下の単語が説明なしに使われます。
合成数出しカマトト
また以下の略称・呼称を使います。
A : エース
T : 10
J : ジャック
Q : クイーン
K : キング
X : ジョーカー
本記事は素数大富豪中級者以上に向けた記事です。 ちょっと読んでちんぷんかんぷんでしたら3TK氏が書いた、この記事よりもはるかに丁寧で見やすいoverKJQJ(通称オバケ)特集~ - [素数大富豪]3TK's blog を先に読むことをお勧めします。
はじめに
最近(2021年4月時点)overKJQJ*1があまり対戦で見られなくなったらしい*2。 しかしoverKJQJを覚えることは確実に勝利に寄与してくれる。相手に4枚出し→KJQJ と組まれた場合にoverKJQJで返せるか返せないかは勝敗に直結するうえ、相手の手札が~15枚程度のときのoverKJQJは絶対的な強さを持つ。
本記事はoverKJQJを今から覚えようとするプレイヤーや最近overKJQJを使わなくなって記憶から抜けてきた熟練者に向けて、覚える順番の指針を示すためのものである。
素数(今回は合成数だが)を覚えるときに意識すべき点は3つだ。まず、その素数が大きい(≒返されにくい)のかどうか。次にその素数が実戦で揃えやすいのかどうか。最後にその素数が覚えやすいかどうかである。
強いoverKJQJについてはマリンさんが書かれた以下の記事が参考になる。 overKJQJとカードカウンティング - マリンの日記【素数大富豪】
ということで揃えやすいoverKJQJについて去年の秋ごろ私が作ったデータを記事にした*3。
概要
先手:4枚出し
後手:ドロー → 合成数出しカマトト(手札24枚)
先手:KJQJ
後手:ドロー → overKJQJで返す
という流れを想定し、「山札からランダムに25枚引いたときに、個々のoverKJQJがどのくらいの確率でそろうのか」を調べた。
調査方法
python3で以下の手順を10,000,000回行い、overKJQJが揃った割合として確率を出した。
トランプから25枚を取り、個々のoverKJQJが揃っているか調べる。1デッキ54枚からランダムで25枚とる場合と、1デッキから11枚とった(相手の)手札でKJQJが(ジョーカーを使ってでも)作れるときに、12枚目から25枚とる場合の2パターンについて1千万回ずつ調べた。前者は相カマトトスタート、後者は初手4枚出し→後手カマトトスタートを想定している。
overKJQJの判定方法は次の通り。
例えば
の場合、
はのみ、はでもでもよい、はAXA()でもT1でもよい、はでもでもよい
として、そのいずれかが揃ったらKQJQが揃ったとする。
またはとできる。
結果
はてなでの表の作成が面倒なため画像で掲載する*4。KJQJを抜かないパターンのランキングは以下の通り。
(2021/05/02追記)上の画像のKKTJの素因数分解が間違っていたため画像を修正しました。(追記ここまで)
両パターンをグラフにプロットすると次のようになる。
ちょっと見づらいが、上に行くほどそろえるのが簡単で、overKJQJ合戦になった時は右の数を覚えていると強いと読もう。
また、何かしらのoverKJQJが揃った割合は54枚のとき88.4%、KJQJ抜きのとき81.6%となった。
まったく覚える必要はないが最下位はKKTT = 2 * 5 * 101 * 13001。ジョーカー2枚をゼロにしないと出せないoverKJQJはこれとKJKK = 409 * 32057だけである。
KJKQ(58.19% / 47.46%)についてnishimura氏が公開している素数大富豪シミュレーションで少し検証してみたが、おおよそ間違いはなさそうだ。(1枚目:54枚からランダム、2枚目:'K','J','Q','J'の4枚を抜いてランダム、3枚目:'X','J','Q','J'の4枚を抜いてランダム。繰り返すが今回検証した条件ではKJQJにジョーカーを使う可能性も加味している。)
ちなみに一千万回の試行にかかった計算時間は54枚のとき74分、KJQJ抜きのとき102分ほど。
結局何を覚えればいいの?
KJKQ、KQJKが抜きんでて揃いやすいため、まず覚えたいところ。
大きくて出しやすいoverKJQJというとKKJQ、KKTJあたりになるのでこれらも強力である。
自分からoverKJQJバトルを仕掛けるときはKKで始まる強いoverKJQJを覚えていなくてはならないが、私はKKJQ、KKTJ、KKKQ、KKQKの4つ以外はまず揃わないだろうと想定してそれ以外にKKxxは覚えていない*5。
おわりに
overKJQJの出し合いは大怪獣バトルみたいで見てる側も楽しいのでまた頻出するようになると嬉しい。他にもoverKJQJに関する求めたい確率は色々ある*6が大抵素数大富豪シミュレーションでできるので何か面白い結果が出たら教えていただきたい。
overKKQTJ、overKKQKJについても同じプログラムで調べられるが手札何枚を想定するかが悩みどころである。本記事より簡潔に済ませるかもしれないがいずれoverKKQTJやoverKKQKJの統計も公開するのでこうご期待。
*1:素数大富豪において4枚出し最強の素数KJQJ = 13111211を超える大きさの4枚出し合成数。相手のKJQJに返すことができる。例 : KQJK = 683 * 19211
*2:以下を参照。
【第2期蝉王戦】データ分析 - 初代素数王の備忘録 KKKQ未満のOverKJQJが減ったのは、KKKQ未満のOverKJQJが先手の4枚→KJQJ→3枚に対する対抗措置として強力だったけど、二刀流の普及でカマトトしても7枚出しで上がられてしまうことも多いためKKKQ未満のOverKJQJの回数が減ったという背景もあると思う。 https://t.co/68nAC7ILZj ・もはや強プレイヤーはみんな覚えているので、KKKQなど絶対返されないものを除いて価値が下がった(返されやすくなった)
これに関する意見の一部
・OverKJQJを相手が出す前に勝ち切る戦法(相手がカマトトしたら、残りで上がれるようにしておくなど)をするプレイヤーが増えた
といったところでしょうか。#マスプライム杯 https://t.co/N499jYIkl6
*3:覚えやすいoverKJQJは表を眺めるなどして各自ピックアップしてほしい。KQKQ = KQ * 10001 = 25 * 41 * 73 * 137とかが覚えやすいと思う。
*4:生データが欲しい人は私 @kAItAI_wInd_Is に連絡してください
*5:KKKKは自力で素因数分解可能な合成数だが出したことは未だない
*6:有用なおばけ数個だけで何%返せるのか、相カマトトからおばけ対決に持ち込むときはどのくらいの大きさを用意していればいいのか、初手おばけは現実的にあり得るのかなど
素数大富豪の第三歩(戦略を身につける)
(筆者: カステラ(twitter: @graws188390))
先日の記事では素数大富豪で使える素数・合成数を紹介しました。 qk-titech.hatenablog.com 本稿では素数大富豪をプレーするうえでの基本テクニックを紹介します。この分野に関しては北大素数大富豪同好会さんの戦略記事があります。大変よく書かれているので一度読むことをお勧めします。この記事の内容を補足したり、基礎的な部分を充実させたりすることが本稿の目的です。 prime-hu.hatenablog.com
一部内容が重複している箇所があります。とくに北大素数大富豪同好会さんの記事を参照する際は【北】で表すことにします。
基本の考え方
いきなりですが素数大富豪の出し方の極論を述べます。
強い素数・合成数を出して相手にパスさせ手番をとり、残りの手札を全部出して上がる
具体例で説明します。自分の手番で場には何もなく、手札が(7TQK)だとします(ドローはしない、もしくはドロー済であるとします)。T7とQK(2枚出し最大素数)に分けられますがここではQKから出すべきです。QKに対して相手はそれを上回るには合成数出ししかなく返される可能性は低いと考えられます。一方でT7から出すと相手にQKを先に出され手番をとられ上がられる可能性があります。
ちなみにこれはカクヨムで連載されている素数大富豪小説https://kakuyomu.jp/works/1177354054882787354:title=「QK部 -1213-」の第2話に出てくる場面です。
しかし初期手札11枚からこれをやるには難易度がかなり高いです*1。残りの手札が多いためそれを全部出して上がるのは容易ではないからです。ということで普通はあらかじめ手札を消費して残りの手札を減らしておきます。つまり
弱い札を消費し、強い素数・合成数を出して相手にパスさせ手番をとり、残りの手札を全部出して上がる
となります。これは【北】における「基本の流れ」そのものです。この進行は実際の試合でもっともよく見る展開なので要チェックです。
初期手札で考えること
初期手札が配られたらまず切り札になりえる素数・合成数は何であるかをチェックしましょう(【北】では「最大火力」と表現されています)。2枚出しならQKやそれを超える合成数出し、3枚出しならKTJ以上、4枚出しならKTQJ以上が一応の目安となります(絶対的なものではありません)。そしてその枚数ならどのように他のカードが消費できるかを考えます。知っている多枚出し素数はそれ自体が切り札になりえる*2のでそれも考慮します。
たとえば初期手札が(2344559TJQK)なら 2枚出しなら出せる最大はQK、3枚出しならKTJ、4枚出しならKTQJ となります。次にそれを除いた残りの手札をどのように消費していくか考えます。 (思考の過程は一例です)
- 2枚出しならQKの次に出せる大きな素数は9Jだがそれを出すと残る奇数が3だけの一方偶数は6枚で厳しい(5は偶数扱い)。代わりに59→2Jなら残りは(3445T)だから先ほどよりややましになったか*3。
- 3枚出しならKTJの前に出す3枚出しとして443を選ぶと残りが(2559Q)で合計が3の倍数(つまりどう並べ替えても3の倍数で素数にならない)。代わりに523だと残りは(4459Q)で合計が3の倍数でないのでこちらにしたい(並べ替え次第では素数になる可能性あり、実際544Q9は素数)。手番のときにドローして奇数が引ければ3枚→3枚→KTJ(切り札)→3枚、とくに7を引ければ3枚→KTJ(切り札)→57(グロタンカット)→4枚もあるのでドローも一考。
- 4枚出しならKTQJの前に出す4枚出しとして4423を選ぶと残りが(559)で素数にならない(559=13*43)。5443でも残りが(259)で素数にならない(259=7*47, 529=23^2)。5449なら残りは(235)、523で素数となるので5449→KTQJ(切り札)→523と出す。
先手なら一番自信のある枚数で出します。この例だと4枚出しですね。後手なら相手の出方によりますが、小さな3枚出しならこちらは4Q9が出せるので受けて立ってもよいです。相手が3枚出しに出たならKTJ以上の強い3枚出しをもっていそうと考えてドローやカマトト(わざと合成数を出してペナルティを受け手札を増やす戦術)もあり得ます。相手が5449よりも大きな4枚出しだとこちらはKTQJを崩さないといけないのでドローして崩さない可能性を探るか、それでもダメならカマトトも視野に入れます。
2枚出しは偶数の消費効率がよくないので上の例のように少し偶数が多めの手札だと苦しくなります。これが3枚出し以上を積極的に出すこと・偶数消費型素数を覚えることを推奨している理由です。覚えている個数が多いほど上のような組み切りがしやすくなります。
カード消費のポイント
前項では初期手札から切り札となる素数・合成数を見つけ、そこから戦略を組み立てる方法を述べましたが、実際の対戦ではその通りにいかないこともしばしばあります。ここでは対戦の中でうまく手札を消費していく方法をみていきます。
絵札を残す・偶数から消費する
切り札は絵札主体の素数・合成数になるのでそれを構成する要素となる絵札は残して他のカードから出していくのが基本です。また、偶数(5を含む)のカードは手札に余りやすいので早めに処理します。
グロタンカットに気を付ける
グロタンカット(57)が手札にあるならそれをなるべく崩さないような手組をします。グロタンカットは絵札を失うことなく手番をとる、維持することができるのでかなり強力な存在です。例外はグロタンカットに頼らなくとも勝ち筋が見えるときと相手の上がられそうでグロタンカットを崩してでも出さなければならないときくらいだと思って大丈夫だと思います。
そして相手にグロタンカットを出させないことも考える必要があります。もっとも簡単かつ効果的な方法は57未満の(革命時なら57より大きい)2枚出しを出さないことです。このとき4(革命時は6, 8, 絵札)が2枚出しでは出しづらくなります(4のつく2枚出し素数は4A, 43, 47のみでいずれも57より小さいため。他も同様)。合成数出しで使う、2枚出し以外で使う、最後の上がり素数まで残すなどの工夫が必要です。3枚出し以上でもとくに4の使う素数は早く覚えてしまって、4A, 43, 47以外でも4を使えるようにしましょう。
時には勘出し
素数大富豪をプレーする際に素数表などを参照する行為は基本的に禁止されています*4。素数かどうかわからない数でも場に出すことはでき、もし素数でなかったときは出した枚数と同じ枚数だけ山札を引くペナルティを受けるルールでした*5。素数かどうかわからない数を出すことは多少勇気がいるプレーですが、【北】で述べられているように勘出しを避けてはいられない場面もありますし、ペナルティをカードを大量に引いて手札を充実させるチャンスと捉えれば勘出しのデメリットは案外小さいものです。意外と当たることも多い(11枚でも2・3・5の倍数を避けて出せば1割強当たります)のでぜひ勘出しにチャレンジしてみてください。
ラマヌジャン革命
ラマヌジャン革命(A729)を出すとそれ以降小さい数が強くなるのでした(再びラマヌジャン革命を出すことで元に戻る)。手札に1桁のカードが多く絵札が少ないとき、相手に絵札*6が固まっていそうでそのままでは相手に分がありそうなときはラマヌジャン革命のチャンスです。A729が手の中に揃ったら崩さずにとっておきたいところですが、グロタンカットも7を消費するので7をどちらに使うべきかはよく考えましょう。
革命下では1桁のカードが多いほど、先頭のカードが小さいほど数として強くなる(つまり小さくなる)ので、Aの価値が非常に高くなります。Aはぜひとも切り札の一部として使いたいので、一の位が1の素数を出すのにAを使うのは避けたほうがよいです*7。
グロタンカットの項で述べたのと同様に、相手にラマヌジャン革命を起こされないよう4枚出しには気を付けましょう。平常時はほとんどの4枚出しはA729を超えるので並べ替えてもA729を超える素数をつくることができないA447, A45A, A48Aの3つだけ注意すればよいですが、革命下ではA729はかなり強い数なので容易に革命返しができてしまいます。相手に革命してもらいたい場面を除いて革命下での安易な4枚出しは控えたほうが賢明です。
ラマヌジャン革命が発生したときA729より小さい4枚出しならその場で返すことができますので、A729未満の4枚出し素数も備えましょう。とくにA2X9とA48Xが重要です。
A0A3, A0A9, A02A, A033, A039(ジョーカーを0として使用)
AA23(いい兄さんor勤労感謝の日or Fibonacci数列の最初の4項を連結)
AA29(いい肉)
A223(平成の天皇誕生日、200番目の素数)
A229, A249, A259, A279, A289(A2X9の形、1219=23*53は素数でない)
A45A, A453, A459(1457=31*47は素数でない)
A48A, A483, A487, A489(A48X(石破)は四つ子素数)
A553, A559
A663, A667, A669(A66X(安室)は三つ子素数)
A693, A697, A699(A69X(ヒロキ)は三つ子素数)
小さい合成数もありますが使う機会はあまりないように思います。参考として挙げておきます。
A0A4=2*3*K^2, A0A5=5*7*29, A0A6=2^3*Q7, A0A7=3^2*J3(ジョーカーを0として使用)
A243=J*J3, A469=K*J3, A695=3*5*J3(113の倍数*8 )
A046=2*523, AA26=2*563, AA38=2*569, AA74=2*587, AA86=2*593, A286=2*643, A294=2*647, A486=2*743, A538=2*769(素数の2倍)
A024=2^T, A375=5^3*J, A458=2*3^6(その他)
相手に上がらせない戦略
相手に上がられそうなときは相手の上がりを阻止するプレーをしましょう。こちらが先に上がってしまうのが最善ですが、それが叶わないならこちらの上がりを度外視してでも阻止するほうがよい場面もあります(展開によってはどうしようもない場合もありますが)。ここでは主に2人対戦での戦略を紹介します。
相手の手札の枚数を見る
相手が上がりに近いかどうか(相手の速度)を判断するもっとも簡単な手段は相手の手札の枚数を見ることです。少ないほど上がりに近そうというのは言わずもがなですが、危険度を枚数で表現するのは相手の力量やゲームの展開に大きく依るうえ、あてにならないことも多いです。【北】で述べられている「相手が4枚出しに精通しているなら7枚ぐらい」はひとつの目安として捉えたほうがよいと思います。
相手の手札の枚数という情報は、こちらが親として場に出すときに何枚で出すかの判断に使えます。相手の手札の枚数をn枚とします。
- n+2枚以上で出せば、相手はドローしてもn+1枚なので返されません。弱い数でも確実に通るのでもっともよい出し方です。
- 一方でn枚で出すのは相手に「どうぞ上がってください」と言っているようなもので極力避けたほうがよいです。n+1枚も相手がドローすればn枚の場合と同じ状況になるので控えたほうが無難です。
- n-1枚以下で出すのは相手の即座の上がりはほぼ防げる*9ものの、カマトトされることもあるので注意しなければならないこともあります。
相手に強いカードを消費させる(レベルやや高)
こちらの手札が弱くて戦えなさそう、相手が絵札を多くもっていそうなときは相手に絵札を使わせてこちらの不利を相対的に減らす方法があります。よく使われる方法は手札のちょうど半分の枚数を出すことです。たとえばこちらが手札6枚のときに3枚出しすれば残りは3枚。相手はそれに弱い3枚出しを返しては次にこちらに上がられてしまうおそれがあることから、多少絵札を使ってでも大きな数を返すはずです。次にこちらが出せるのであればそのまま上がりですし、たとえ出せないような大きな数でも相手の絵札を消費させたことにより、相手の今後の戦略に狂いが生じたりする可能性が出てきます。もし最初の時点で手札が7枚なら、ドローしてから4枚出しすればOKです。
2n枚の手札をn枚出し素数2つに分けるのはなかなか大変ですが、有効な場面が少なくないのでたくさん素数を覚えて練習するのがよいと思います。
まとめ
本稿で紹介したテクニックと北大素数大富豪同好会さんの戦略記事を併せれば素数大富豪の基本は概ね身につけられるかと思います。とはいえ、これらの戦略を実戦で運用していくには素数のレパートリーを増やしていくことが不可欠です。3枚出しまではすべて覚えるつもりで頑張りましょう。
また、これらの基本戦略はあくまでも基本です。実戦では基本に当てはまらない場面も多くありますし、敢えて基本どおりに行動しないプレーヤー*10もいます。しかし、それらとの兼ね合いは経験で学んでいくしか術がないのが現状です*11。あなた自身が新たな戦略を開発するつもりで臨みましょう。
*1:大会では初期手札の優劣が激しい際にたまに見ますが。
*2:何枚出しなら勝てるかは相手に依ります。執筆時点(2021年3月)での大会なら8枚は欲しいところですが、6枚でも有効な場合もあります。
*4:新しい素数を覚えるために素数表を参照しながら練習することはあります。参考: 「QK部 -1213-」第25話
*5:初心者向けにペナルティをなくしたり、引く枚数を減らしたりすることはありますが、本来のルールでは出した枚数と同じ枚数です。
*6:素数大富豪ではJ, Q, K, ジョーカーだけでなくTも絵札として扱います。つまり「絵札」は2桁の数として扱えるカードという意味になります。
*7:例外はAA, A0A, A02Aなど革命下最強クラスの数。
*8:113はAKでも出せますが革命時にはAの価値が非常に高いので素因数で使うのはもったいないです。
*10:筆者が該当しそう。
*11:戦略としてまだ確立していないこともあります。
素数大富豪の第二歩(素数を覚える)
(筆者: カステラ(twitter: @graws188390))
本稿では素数大富豪のルールを覚えたばかりの方に少しでも早く素数大富豪が上達できるような素数・合成数を紹介いたします。 本稿のモチベーションとしては鰺坂もっちょさんの素数大富豪の紹介記事と北大素数大富豪同好会さんの戦略記事の間を埋めることです。内容のレベルは初学者向けチュートリアル | 素数大富豪 Wiki | Fandomに相当すると思います。 www.ajimatics.com prime-hu.hatenablog.com 書き始めたところ想定よりも文章の量が長くなってしまったので素数大富豪で覚えるべき素数・合成数を紹介する記事(本稿)とプレーのテクニックについて述べる記事に分割することにしました。
追記(2021年3月30日): 続編を投稿しました。 qk-titech.hatenablog.com
以下、カード(トランプ)のランクについて、エース(Ace/1)を「A」、10を「T」(Tenの頭文字)、ジャック(Jack/11)を「J」、クイーン(Queen/12)を「Q」、キング(King/13)を「K」と記します。
枚数について
素数大富豪で出せる数はその枚数で分類されることが多いです。理由は場に数があるときは場と同じ枚数で出さないといけないというルールと、同じ値でも出す枚数で強弱が異なることがあります。後者についてもう少し詳しく説明しましょう。たとえば1213という素数は「QK」と2枚で出すとこれより大きい2枚出しの素数はないのでかなり強いです*1。一方「A2K」「QA3」と出す3枚出しはこれより大きい3枚出し素数はたくさんあり強い数ではありません。「A2A3」の4枚出しに至ってはこれを下回る4枚出し素数が数えるほどしかないほど弱いです*2。
1枚出し
1枚出しは種類が少ない上にたとえ忘れてもその場で素数判定や素因数分解が容易にできますが、念のためまとめておきます。 1枚出しの素数は以下の6個です。
2, 3, 5, 7, J, K
合成数出しも意外と使えます。
4=2*2, 6=2*3, 8=2^3/8=2*2*2, 9=3^2/9=3*3, T=2*5, Q=2*2*3
他に単独ジョーカーが最強カードとして出せることに注意しましょう。
2枚出し
AA, A3, A7, A9, 23, 29, 3A, 37, 4A, 43, 47, 53, 59, 6A, 67, 7A, 73, 79, 83, 89, 97, TA, T3, T7, T9, J3/AK, Q7, KA, K7, K9, 2J, 3J, 3K, 6K, 8J, 9J, TK, QK
素数大富豪のプレー回数を重ねれば自然とすべて覚えられるでしょうが、ここで覚え方をひとつ提示します。
11(AA)以上139(K9)以下の整数はその場で素数判定します。もし素数なら
- 一の位が1, 3, 7, 9である
- 各位の和が3の倍数でない*3
をともに満たす*4ので、この条件を満たしながら素数でないものを除けば上のリストが得られます。2条件を満たしながら素数でないものは
49, 77, 9A, J9, QA, K3
の6つです。つまり上述の2条件に加えて
- 上の6つのいずれでもない
と覚えればK9までの整数が素数か否か判定できます。またこの6つのうちQA=J^2以外は7の倍数であることに注意すると、上述の2条件に加えて
- 7で割れず、かつ、QAでない
という条件を課しても素数であると判定できます。うっかり87とかを出さないように各位の和が3の倍数でないことは忘れずチェックしましょう。
K9よりも大きな2枚出し素数はすべてXJまたはXKという形です。なのでXに入る数を暗記してしまいましょう(上と重複しますがAKも含めることにします)。語呂合わせとあわせて紹介します。
です(ちなみに9283, 6AQT3もそれぞれ素数です。ついでに覚えましょう)。しかもそれ以外は素数でないので、5J、6J、7K、9K、QJといった一見素数っぽい数も素数でないということがわかります(素因数分解はそれぞれ511=7*73、611=13*47、713=23*31、913=11*83、1211=7*173)。
余裕があれば合成数出しにもチャレンジしましょう。以下に使いやすい2枚出し合成数を挙げます。
64=2^6, 8A=3^4, 86=2*43, 94=2*47, 96=2^5*3, 98=2*7^2, T5=3*5*7, T6=2*53, QA=J^2, Q5=5^3, Q8=2^7, 4T=2*5*4A, 5Q=2^9, 6T=2*5*6A, 8T=2*3^4*5, QT=2*5*J^2, KT=2*5*KA, KJ=3*A9*23, KQ=2^5*4A, KK=K*TA
とくに最後の4つ(KT以降)は2枚出し最大素数のQKを超える合成数です。手札に揃ったら積極的に出したいところ。
3枚出し
3枚出しは300個以上あります。これを全て覚えるのはなかなか大変(不可能ではない)なので、よく使うものを中心に覚えていきましょう。
偶数消費型素数
2, 5以外の素数はすべて一の位が1, 3, 7, 9なのでA, 3, 7, 9, J, Kのいずれかを最低1枚は消費します。ということは残りの2, 4, 5, 6, 8, T, Qは消費しづらい、すなわち手札に残りやすいカードです。そこでそのようなカードを一気に消費するような素数(偶数消費型素数)が素数大富豪では大変便利です。
素数大富豪では「5は偶数」と言われ、5や5の倍数も偶数として扱うことが多いです。理由は上述のとおり5が他の(通常の意味の)偶数と同様の特徴をもつからです。
以下に偶数を2枚使う3枚出し素数の一覧を挙げます(上位互換*6のみ)。
223, 227, 229, 22K,
42A, 42J,
52A, 523, 257,
263, 269, 62J,
82A, 823, 827, 829,
T2A, 2TJ, 2TK,
Q23, 2Q9, 2QJ,
443, 449,
54A, 547, 54K,
64A, 643, 647,
487, 48K,
T49, 4TJ,
4Q7, 4Q9, 4QK,
557,
653, 659,
853, 857, 859, 85K,
5TA, 5T7, T5K,
Q59, Q5J,
66A,
863,
6TA, T63, T69, T6K,
6QA, 6QJ, Q6K,
88A, 883, 887,
8TA, T87, 8TK,
8Q3, Q89,
TT3,
QTA, QT7, QT9, QTK
末尾が3つ以上受け付けられるものでも22X, 82X, 64X, 85X, 88X, QTXはかなり使えます。一方でQQXはXが何であっても素数にはなりません。4枚以上でも同じように偶数消費型素数(642A, 86423, 6644227, 8855QQTT9など)があるので探してみましょう。
大きい素数
手番をとる・維持する際には大きい素数ほど有利なので大きい素数は重要です。まず3枚6桁(構成する3枚がすべて2桁)の素数7個(上位互換のみ)を覚えましょう。
KKJ, KQK, KJJ, KTJ, QTK, JQJ, TJJ
次に3枚5桁でも2万以上の大きい素数11個。
8TK, 7TJ, 6QJ, 4QK, 4JK, 4TJ, 3TK, 2KK, 2QJ, 2TK, 2TJ
9万台と5万台に3枚5桁の素数がないことに注意しましょう。
その他の素数
他の3枚出し素数もまったく必要ないわけではないので少しずつでも覚えていきましょう。テクニックの記事で手札から素数を組み切る話をしますが、その際に知っている素数が多ければ多いほど融通が利くからです。以下のもりしーさん*7の記事で紹介されているようにAT3・AT9(伊藤さん・伊藤くん)、9T3・9T9(工藤さん・工藤くん)などの語呂合わせ素数がとっつきやすいと思います。 prm9973.hatenablog.com
合成数出し
3枚になるとその場での計算が大変なので合成数出しもあらかじめ覚えておかないと出すのは厳しいです。すでに覚えるべき素数がたくさんあるのでまずはそちらを優先して、合成数出しは後回しでもそんなに問題はないと思います。意欲がある方向けに使いやすい合成数出しを紹介します。
243=3^5, 256=2^8, 445=5*89, 448=2^6*7, 486=2*3^5, 488=2^3*6A, 549=3^2*6A, 625=5^4, 648=2^3*3^4, 686=2*7^3, 729=3^6, 768=2^8*3, 84A=29^2, T24=2^T, 3Q5=5^5, 5T3=3^6*7, 8Q5=5^4*K, 8Q8=2^6*Q7, 89T=2*3^4*5*J, 9K4=2*4567, TQ5=3^4*5^3, QQ8=2^5*379, KQ2=2*3^8, KQ5=3*5^4*7, 3QK=7^4*K, 8QJ=K*6247, TKQ=2^6*A583, QQJ=53*2287, QQK=47*2579, KKQ=2^4*29*283
4枚出し以上
出す枚数が4枚以上になっても偶数消費型素数や大きい素数が重要であることは変わりませんが、覚える量が著しく増えます。頑張って覚えましょう。以下に4枚出し以上の素数をまとめてある記事を挙げます。
4枚出し
primedaifugo.fandom.com prm9973.hatenablog.com prm9973.hatenablog.com searial.web.fc2.com hachi-2718.hatenablog.com
5枚出し
6枚出し
7枚出し
hana3101382283.hatenablog.com hana3101382283.hatenablog.com
11枚出し
枚数不定
prm9973.hatenablog.com searial.web.fc2.com tatyam-prime.hatenablog.com hana3101382283.hatenablog.com
合成数出し
akatanana-818ubugqm.hatenablog.com graws188390.hatenablog.com
まとめ
素数を覚えるのは大変な作業ですが、素数大富豪の腕を上げるには不可欠なものです。2枚出しまではすべて覚えれば初心者は卒業。3枚出しがそこそこ出せれば中級者。3枚出しをほとんど覚え4枚出し以上にも踏み込めるようになれば素数大富豪大会でも遜色ない試合ができるかと思います(執筆時点(2021年3月)での筆者の主観)。
*1:実際はKQ=2^5*4AなどのQKを超える合成数出しがあるのでその強さを過信しないようにしたい。
*2:弱い、ということはラマヌジャン革命が発生すると強くなるということです。ただし、この場合は「AA23」としたほうがより小さく(革命時なら強く)なります。
*3:各位の和が3の倍数だともとの数も3の倍数になります。たとえば51(5A)なら5+1=6、117(J7)なら1+1+7=9でどちらも3の倍数なので素数でないと判定できます(実際、51=3*17、117=3^2*13)。
*4:つまり2, 3, 5のいずれでも割り切れない。
*5:T3にあてられる女性名がこれしか思いつきませんでした。
*6:たとえば42Aと24Aはカードの組み合わせが同じでともに素数ですが、ここでは42Aのみ挙げています。
*7:素数大富豪大会のMathpower杯(2017・2018)・マスパーティ杯(2019)・マスプライム杯(2020)で優勝。
ごあいさつ
初めまして!
私たちは素数大富豪というトランプゲームで遊ぶ同好会で、2019年6月に活動を開始しました。
素数大富豪ってなに?という方はこちらかこちらへ。簡単に説明しますと、トランプゲーム「大富豪」において、出せる数を素数に限定しよう!というコンセプトで2014年に考案されたゲームです。
最近は素数大富豪オンラインでの活動しか行ってませんが、以前は対面でトランプを使って遊んでいました。活動風景はこちらから見ることができます。
このブログでは素数表・戦術指南・豆知識など素数大富豪に関するいろいろな情報を発信していこうと思います。
次回の更新では初心者向けの記事を公開する予定です。
近々、オンラインでの新歓イベントも開催する予定ですので興味がある東工大生の皆さま、ぜひご連絡ください!